【シニア向け】インナーマッスル・体幹の正しい鍛え方|スタスタ歩ける体を作る筋トレ入門

機能解剖学スペシャリストパーソナルトレーナーの澤木一貴先生の『長寿の体幹トレーニング~4週間で姿勢がよくなる! スタスタ歩ける!』という書籍
出典:『長寿の体幹トレーニング~4週間で姿勢がよくなる! スタスタ歩ける!』

「最近、つまずきやすくなった」

「姿勢が悪くなって、背中が丸くなってきた」

「長時間の外出が億劫になった」

そうした体の衰えは、年齢のせいだと諦めていませんか?

実はその多くは、体の奥深くにあるインナーマッスルの衰えが原因かもしれません。インナーマッスルは、シニア世代が健康寿命を延ばし、老後の健康不安を解消するために欠かせない、非常に重要な筋肉です。


1. 深刻化する社会的課題とインナーマッスルの関係性

出典:生命保険文化センター

この問題は、単なる個人の悩みではありません。社会全体で解決すべき大きな課題です。

厚生労働省のデータによると、要介護(要支援)認定者数は年々増加しており、2023年には約700万人に達しました。誰もがいつか直面する可能性があるこの課題に対し、私たちは「介護予防」という視点で向き合う必要があります。

健康寿命を延ばすことが、個人の自立だけでなく、社会貢献にもつながる時代なのです。

「健康寿命」と「平均寿命」の違い

健康寿命推移
出典:厚生労働省 健康寿命推移

日本人の平均寿命は延びていますが、大切なのは、他人の助けを必要とせず自立して生活できる期間を示す**「健康寿命」**です。2019年のデータによると、男性で約9年、女性で約12年もの間、平均寿命と健康寿命に差があり、この期間は介護が必要な状態になってしまう可能性があります。

健康年齢をいかに長く保つかが、セカンドライフを充実させる鍵です。インナーマッスルを鍛え、自分の力で歩ける体を維持することは、この健康寿命を延ばすための最も効果的な手段の一つです。また、日本の病院の病床数は減少傾向にあり、今後も在宅での療養がより一層求められる時代になります。自分の体を自分で管理する能力は、これからの社会でますます重要になってくるでしょう。

このような課題と向き合うためのヒントを与えてくれるのが、機能解剖学スペシャリストパーソナルトレーナーの澤木一貴先生の『長寿の体幹トレーニング~4週間で姿勢がよくなる! スタスタ歩ける!』という書籍です。この本は「きつい筋トレ」ではなく、日常生活で簡単に続けられるインナーマッスルの鍛え方を教えてくれます。

この記事では、この書籍の考え方を参考にしながら、中高年やシニア世代が抱える体の悩みを解決し、いつまでもスタスタ歩ける元気な体を取り戻すための方法を解説します。

この記事で分かること
  • シニアがインナーマッスルを鍛えることの重要性がわかる
  • 転倒予防姿勢改善に繋がる具体的なメリットがわかる
  • 自宅で簡単にできる、複数のインナーマッスルの鍛え方がわかる
  • 豊かなセカンドライフを送るためのヒントが見つかる

2. なぜシニア世代にインナーマッスル・体幹が重要なのか?

インナーマッスル図
出典:The SILK インナーマッスル図

多くの人が「筋トレ」と聞いてイメージするのは、力こぶを作るようなアウターマッスル(表面の大きな筋肉)かもしれません。しかし、シニア世代にとって本当に大切なのは、体の土台を支えるインナーマッスルです。

インナーマッスル・体幹とは?

インナーマッスルとは、文字通り体の内側にある深層部の筋肉のこと。姿勢を維持したり、内臓を正しい位置に保ったり、関節を安定させたりする役割を担っています。骨や関節を直接支えるため、私たちがバランスを保ち、滑らかに動くために欠かせません。

インナーマッスル・体幹が衰えるとどうなる?

インナーマッスルは、意識して使わないと加齢と共に衰えていきます。その結果、以下のような問題が起こりやすくなります。

  • 姿勢の悪化: 背中が丸くなり、お腹がぽっこり出る「猫背」の原因になります。
  • 転倒リスクの増加: バランスを保つ力が弱くなり、ちょっとした段差でもつまずきやすくなります。
  • 腰痛や肩こり: 体の軸が不安定になり、特定の筋肉に負担がかかるため、慢性的な痛みの原因になります。
  • 基礎代謝の低下: 筋肉量が減るため、太りやすくなります。

3. シニアがインナーマッスル・体幹を鍛える5つのメリット

体幹トレーニング

インナーマッスルを鍛えることは、単に筋力をつけること以上のメリットをシニア世代にもたらします。

メリット1:転倒リスクの軽減

インナーマッスルは、不安定な場所でも姿勢を保つバランス能力に深く関わります。特に、股関節周りのインナーマッスルを鍛えることで、歩行が安定し、つまずきや転倒を防ぐことができます。これは、シニアにとって最も重要な介護予防の一つです。

メリット2:姿勢の改善

インナーマッスルがしっかり機能すると、骨盤や背骨が正しい位置に保たれ、自然と姿勢が良くなります。背筋がピンと伸び、見た目が若々しくなるだけでなく、呼吸が深くなり、内臓の働きも活発になります。

メリット3:腰痛・肩こりの緩和

体の軸が安定することで、特定の筋肉への負担が軽減されます。これにより、多くのシニアが悩む腰痛や肩こりが和らぎ、毎日を快適に過ごせるようになります。

メリット4:基礎代謝アップ

筋肉量が増えると、消費カロリーが増え、太りにくくなります。インナーマッスルを鍛えることは、健康的な体重を維持し、生活習慣病を予防することにもつながります。

メリット5:健康寿命の延伸

自分の足で歩き、自由に体を動かせることは、人生の質(QOL)を大きく向上させます。インナーマッスルを鍛えることは、日常生活の動作を楽にし、いくつになっても活動的な生活を送るための土台となります。


4.シニア向けインナーマッスル・体幹の正しい鍛え方

体幹の正しい鍛え方

この書籍は、シニアがインナーマッスルを鍛えることの重要性を説き、無理なく続けられる具体的なトレーニング法を多数紹介しています。この本が提示する重要なポイントは、「きつい筋トレは不要」ということです。

鍛えるべきは「お腹」「背中」「股関節」

この書籍が特に重視しているのは、体幹の中心である「お腹周り」と、姿勢を支える「背中」、そして歩行に直結する「股関節」のインナーマッスルです。これらの筋肉をバランスよく鍛えることで、体全体が安定します。

「無理なく」「毎日続けられる」トレーニング法

この本で紹介されているトレーニングは、すべて自宅で、椅子に座ったまま寝転んだままでもできる簡単なものばかりです。激しい運動ではないため、運動が苦手な方でも安心して取り組むことができます。毎日少しずつでも続けることが、効果を実感するための鍵です。


5. 今日からできる!自宅で簡単トレーニング

インナーマッスル体操

ここでは、誰でもすぐに始められる、シンプルなインナーマッスルの鍛え方をいくつかご紹介します。

1. 呼吸法(ドローイン)

これは「お腹」のインナーマッスルを鍛える基本の鍛え方です。

  1. 仰向けに寝て、膝を立てます。
  2. お腹をへこませながら息をゆっくりと吐き切ります。
  3. 息を吐き切った状態を10秒間キープします。
  4. この動作を5回繰り返します。

2. 猫のポーズ(背中)

「背中」のインナーマッスルと背骨の柔軟性を高める鍛え方です。

  1. 床に四つん這いになります。
  2. 息を吐きながら背中を丸め、おへそをのぞき込むようにします。
  3. 息を吸いながら背中を反らし、顔を上げます。
  4. これをゆっくりと5回繰り返します。

3. 寝たまま股関節ひねり

「股関節」のインナーマッスルをほぐし、歩行を安定させる鍛え方です。

  1. 仰向けに寝て、両腕を広げます。
  2. 両膝をくっつけたまま、ゆっくりと右側に倒します。
  3. 元の位置に戻し、今度は左側に倒します。
  4. これを左右交互に5回ずつ繰り返します。

4. かかと上げ下げ運動(ふくらはぎ・バランス)

座ったままでもできる、ふくらはぎとバランス感覚を養う鍛え方です。

  1. 椅子に浅く腰掛け、背筋を伸ばします。
  2. ゆっくりとかかとを上げ、つま先立ちになります。
  3. かかとを元の位置に戻します。
  4. この動作を10回繰り返します。

5. 座ったままお腹に力を入れる(体幹)

場所を選ばず、いつでもできるインナーマッスルの鍛え方です。

  1. 椅子に深く座り、背筋を伸ばします。
  2. 両手をお腹に当て、お腹全体に力を入れて固めるように意識します。
  3. その状態を10秒間キープします。
  4. これを5回繰り返します。

これらの体操は、毎日少しずつでも続けることが大切です。無理のない範囲で、ご自身のペースで取り組んでみてください。


6. まとめ:今日から「長寿のインナーマッスル・体幹」を始めよう

長寿のインナーマッスル・体幹

この記事では、シニアがインナーマッスルを鍛えることの重要性と、自宅でできる具体的な鍛え方をご紹介しました。

「長寿の体幹トレーニング」は、単なる筋トレではありません。それは、転倒や介護への不安を解消し、自分の人生を最後まで自分の足で歩くための、未来への投資です。

今日からほんの数分、この記事でご紹介したトレーニングを試してみてください。その小さな一歩が、きっとあなたのセカンドライフをより豊かで、輝かしいものに変えてくれるはずです。